2024年、自己理解プログラムを経て - 風景への興味を軸にした新たな一歩

行き詰まりを感じていた日々

2024年もまもなく終わりを迎えようとしている。今年は去年ほどの活動はできず、遠出も実はいただいたお仕事に併せて出張することが多かった。
これには、個人の迷いが大きくあった(まぁずっと迷ってばかりの人生だが)。まち探訪家として活動し始めたのが2017年のこと。その後、ライターとして食っていく道を考えながらも、コロナ禍により方針転換。2021年からは会社員との二足の草鞋で数年間活動してきた。

正直、会社員との二足の草鞋になってからは、会社員という社会活動に意識をとられることも多く、自分の進むべき道について考えることを先送りにしてきた。そして、2020年のコロナ禍前から、交通系の記事を書いているときに、どこかしっくりこない感覚が常にあった。それは単なる違和感というより、自分自身への問いかけのようなものだった。

「本当にやりたいことって何だろう?

この問いに、正面から向き合うことができなかったのは、おそらく答えが見つからないことへの不安があったからだろう。もちろん、アクションを何もしなかったわけではない。八木仁平さんの「世界一やさしい「やりたいこと」の見つけ方」を購入し、彼の公式LINE登録もしていた。だが、本を読んでワークをしようにも挫折し、結局具体的なアクションは起こせずにいたのである。

 

 

転職しかけて出てきた問い

しかし、今年は職場での仕事でも4年目で苦しい状況になってきた。自分の得意や強みを生かせているという実感が足りず、また、様々な仕事で発生するストレス*1があり、毎日が消耗戦のように感じられた。本当に今このままでよいのか、転職という選択肢も考えるようになっていた。転職サイトにも登録したし、実際1~2社の面接まで進んでいた。

しかし、面接を受けようとしていて改めて感じたのである。

「自分は何がしたいんだ?どうやって生きていたいんだ?」

私は仕事という行為が本来嫌いではない。誰かの役に立つことは自己肯定感や自己効力感を得られるし、ビジネスであっても、誰かとのつながりがあるということは孤独感を埋めてくれる*2。ただ、自分自身の軸がないままでは、結局与えてばかりで、モチベーションがなく消耗するのである。のちに自己理解プログラムで学ぶことになるが、人間そういう状態で頑張れるのは3年程度。実際、過去もそうやって3年位で挫折することもあった。

とにかく、「自分は何がしたいんだ?どうやって生きていたいんだ?」この問いに答えられなければ転職してもまた消耗するだけではないか。

そんな折に「世界一やさしい「やりたいこと」の見つけ方」を購入した時に登録した八木仁平さんの公式LINEからイベントの告知が来た。テーマは「転職」。まさにぴったりであった。話を聞いてみると、やはり「自分はどういう人間であり、何がしたいのか」という自己分析や自己理解ができていないと転職で苦労するし、転職後で苦労することになるということに改めて気づかされた。

ただ、正直ところでは個人的にはセミナーやそこで案内された無料カウンセリングを受けて、参考にし、自分でワークをやっていこうと思っていた。しかし、話を聞いてみて気づいたのは、ワークをやっても「回答はこれでいいのか」という迷いがどうしてもでることだった。回答の善し悪しをジャッジし、サポートしてくれる人が必要だったのだ。そこで案内された「自己理解プログラム」を受けてみることにした。

jikorikai.com

 

自己理解への投資

「自己理解プログラム」、案内を受けた当初は自己研鑽のプログラムなんて第三者で聞いたら正直うさんくさいもの、受けてもお金をドブに捨てるかなと思っていた。なにせ、この「自己理解プログラム」は100日で完了させるもので、30万円。金額は決して安くない。転職先を斡旋してくれるわけでもなければ、上手くいく確信が自分の中にはなかった*3。しかし、決断した理由は、まさにいま、自己理解が不十分で悩んでいること、そして以前「世界一やさしい「やりたいこと」の見つけ方」を読んで非常にロジカルだと思ったからだ。気合い、思い込みみたいなものは一切無い。それが最終的に各々の答えを見つけられる理由にもなっているようだった。そこは私が受講を判断するポイントとしては大きかった。

そうなれば、あとは「お金」だけが理由となる。個人の信条として「妨げる原因がお金だけならやるべき」というのがある。なぜなら、理屈や思いと違い、お金はただの手段である。手段であれば選択肢はいくらでもある。個人的にも工面できる見込みがないわけではなかった。

もちろん、お金の不安で躊躇する人は多いだろう。だが、私としては自己の理解に投資することは、長期的に見れば決して無駄にはならないと考えた。この気持ちも理由としては大きいし、実際やってみてよかったと思っている。

ただ、もう1点、プログラム参加に際して重要なことがあるので、そこは留保条件としておきたい。それは、自分のメンタル状態の見極めである。自己理解プログラムは必然的に自己の深掘りを伴い、自信のなさや将来への不安が露呈する可能性が高い。そのため、私は「受けた方がいいだろうな」という友人の一部が精神的に不安定がゆえに強く奨められない。一方、私の場合、むしろ自己分析で安定する傾向があり、不安定要因は別のところにあった。この自己認識があったからこそ、プログラムに踏み切れたということは付け加えておきたい。

 

プログラムでの学び

自己理解プログラムは「自己理解のライザップ」と自らを表しており、かなりの密度と強度で自己と向き合うことを求められる。動画を見ながらワークを進めていく形式で、価値観・得意なこと・好きなことの順に見つけていく。それぞれが重なるところに「本当にやりたいこと」があると位置づけられているのである。この過程はシステマティックに見えながらも、決して機械的なものではなく、自己との深い対話の連続であった。

そして、コーチ選びに成功したのが、プログラムを進める一助になった*4。コーチの選び方としては、オタク文化や文脈に理解があり、共感ベースで話ができそうな人を選んだ。これは体育会系の人やイケイケの人だと質問をためらいそうだったからであるし、対話ができるコーチでなければ私はしんどい思いをすると思ったからだ。結果的に、この選択は大正解だった。プログラムの中で何度も深い対話を重ね、時にはっきりとした指摘もありながら、常に建設的な方向へ導いてくれた。この100日間、私の混沌とした思考を整理し、本質的な方向性を見出すことができたのは、間違いなくコーチのサポートがあってこそであり、深い感謝の念を抱いている。

 

見えてきた自分の価値観

さて、プログラムの結果どうなったか。そう、過程も大切だが、ここで大事なのは結果である。

「自己理解プログラム」では、価値観・得意なこと・好きなことの3つが重なるところを「本当にやりたいこと」と位置づけ、一つずつ掘り下げていく。

価値観は、私の場合「回復>快適>安心>達成>本質の理解」の順で満たされるという結論になった。これは非常に納得のいくもので、回復~安心までの価値観を重視しており、それがそろってはじめて物事を進めることができるという実感もあった。逆にいえば、今までの数年間、上手く仕事が進まない理由も、回復・快適・安心が満たされていないことからで、実際その思い当たりはあった*5

 

ストレングスファインダーが示した道

得意なことの発見にはストレングスファインダーを活用した。このテストは非常によく設計されており、全34資質の中から自分の強みを明確に示してくれる。実は2016年と2018年にテストを受けており、今回私はそれを活用した。そう、自己理解プログラムが高いと思う、またやってみたいと思う人はまずストレングスファインダーを受け、ある程度自分の理解を深めた方がいいと思う。特に高校生や大学生~20代には積極的にやってほしい。就活前の学生とか必須じゃないかと思うレベルである。

 

 

私の場合、上位資質として「個別化」「原点思考」「慎重さ」「成長促進」「親密性」などが挙がった。上位14資質までを見たとき、それぞれが確かに自分の強みとして生かされているという実感があった。さらに今回はそこからどういった成功パターンがあるかを分析していき、自分への自信にもつながった。そして少なくない数が今の会社で勤務する中で得た自信であることに気づいた。要するに、大変さとは別に、自信も得ていたということである。この事実は重要で、今後もしばらくは会社に残ることを選択することにした*6

 

"好き"と"興味"の整理から見えたもの

さて、私が今回プログラムで私が最も苦労したのは「好きなこと」の整理である。
読者の中には「え、まち探訪家ってまちを巡ることが好きなんじゃないの?」と思う人がいるかもしれない。しかし、必ずしもそうではないから食うのに困って会社員になるし、活動もガツガツ進んでいたわけではないのだ。なので、苦労することはある意味当然でもあった。

そして、同時にプログラム内で重要な気づきもあった。「興味があること」と「好きなこと」は必ずしも一致しないということである。興味・好きな分野を全部挙げると50以上あり、生成AIの力を借りて整理する必要があった一方で、「本当に好きなのか」と問われると答えに窮することが多かった。ここでは本当にコーチのアシストがなければ整理ができなかったと思う。

 

風景を軸にした新たな出発

そして「好きなこと」の整理を通じて、大きな気づきが訪れた。私が本当に関心を持っているのは、まちや交通そのものというよりも、「そこにある風景」なのではないか。なぜその風景が存在しているのか、その背景にある物語に興味があるのではないか。

思えば風景に関する本も多く買っていたし、とりわけ2011年頃からは「重要文化的景観」に強い興味を示していた。そして地図やまちそのものを見るというより、どこかへ行ったとき、「そこにある風景はなぜ今ここに存在しているのか」に興味が湧いていたのである。例えば、地方ローカル線であれば「ローカル線で買い物にいく老人の存在」であるし、まちであれば「商店街とロードサイドの発展の対比」である。この気づきは、自分の興味の本質を理解する上で重要な示唆となった。

 

meisouyuhin.booth.pm

 

結果として、交通分野への興味は「風景を理解するための文脈」として再定義された。これは興味を完全に手放すわけではなく、より本質的な関心事である「風景」を理解するための要素として位置づけ直したのである。

最終的に、私の「好きなこと」として「風景」、そして、それ以外にいくつかの軸が見えてきた。特に「風景」については、好きなこととして変わらないだろうという自信を持つことができた。なので、風景をベースに、時には別のものも出しながら活動していくというのが今後の方向になる。

一見すると大きな方向転換には見えないかもしれない。しかし、これは納得に納得を重ねて混乱している優先順位や義務的なやることと義務的ではないやりたいことを分離し、方向を定めた結果なのである。自己理解プログラムでは、『やりたいことは天啓のようにはおりてこない』といわれる。それはまさにロジカルに積み重ねた結果なのである。だからこそ、今納得してこの場に執筆しているのである。

そして今後の活動の方向性を次のように定義した。「そこにある物事の理解が十分ではない人や物事に対して、理解(知識・議論)を通じて、より良い方向性を見出せる状況を作る。そのために、自分が好きなもの(風景・日本酒・日本ワイン・漫画)を中心に、本質や様々な視点、そのものが持つ良さを見せていく」。これは私の目指す方向性そのものである。

さらに上位として私のビジョンも設定した。

「世界の複雑さを受け入れ、自然と共に在ることを意識し、深い理解と建設的対話をベースに、それぞれが自らのリズムで歩む世界をつくる」

自分で考えてすごくいいビジョンだと思っている。20代後半からはずっとこう思い、生きてきたし、こうあってほしいと願ってきた。

こうした定義があれば、好きなことが変化しても、得意なことを新たに発見しても、価値観が変化しても進むべき方向はわかりやすい。修正していくだけではないかという展望も見えた。自己理解プログラムは、決して楽な道のりではなかった。しかし、確かにやる価値はあるものだと薦めることはできる。

これからは「風景」を軸に、新たな視点で物事を見つめ、そして伝えていく。それは、まち探訪家としての活動の終わりではなく、より本質的な関心に基づく新たな出発点だと思う。

つまり、自己理解プログラムという投資は、私にこの確かな方向性をもたらしたのだ。もうはじめてはいるが、2025年は自分の定めた道を一歩ずつ、今度こそ着実に歩んでいこうと思う。

みなさんも来年がより実りある1年でありますよう。

*1:これは会社の中の話なので割愛させていただきたい

*2:ちなみに、パートナーがいる状態で仕事をするのがベストだが、2019年始に別れて以来、異性の友人はいれど、パートナーづくりの足がかりは今のところない

*3:ちなみにプログラム完了率は90%台後半であり、かなり高いとは思ってはいた

*4:伴走者と感覚があわないとしんどい。その説明はあえてする必要はないだろう

*5:ちなみに、プログラムでは、一旦決めた価値観も後から変更可能という柔軟な アプローチを取っており、実際に私も一度変更を加えている。そもそも価値観は固定的なものではなく、状況や経験により変化していくものだと考えている

*6:一方で、2024年12月現在、メンタル的には調子を崩して休職を余儀なくされている。これについては自信を得られることとストレスを得ることは打ち消しあう関係にはならないという点でよい勉強にもなった