【2018年7月】「GTFS形式のバス情報整備でバスロケーションシステムを変える!」愛知県豊田市で「バスロケ世直し隊」が決起集会

(過去の投稿のコンテンツをこちらに移しております。本記事は2018年7月30日のものです。)

7月28日(土)、愛知県豊田市・とよた市民活動センター研修室で「バスロケ世直し隊決起集会」が開催されました。

この会は、トラフィックブレインが主催。全国で導入されている高価で仕様がばらばらなバスロケーションシステム(バスロケ)がバス会社・利用者双方のためになっていないことを憂い、その改善の動きを全国的に広めようと開催されました。

この日は同じ豊田市で第13回日本モビリティ・マネジメント会議(JCOMM)が開催されていたこともあり、会場には日本のバス情報整備におけるトップランナーたちの講演を聞こうと日本全国から約60名もの参加者が集まりました。

画像2

会場は立ち見が出るほどの盛況となった

「バスロケ」の現状を憂い、「GTFSリアルタイム」と「オープンデータ」の活用を訴えるトラフィックブレイン

まず、トラフィックブレインからは日本国内でのバスロケの現状とその課題についてを中心に話題提供がされました。まず複数のバスロケのシステムが「乱立」し、あまりにも利用者本位ではない現実についてユーモアを交えながら指摘したあと、現在岡山が民間の努力でGTFS形式でバス情報の整備を進めているという事例について紹介。GTFS形式のバス情報整備によって会社の枠を越えてバスロケを統合する、「世直し」の可能性を示しました。

画像1

トラフィックブレイン太田社長

バス事業者の立場からは「現状の機能ではバスロケーションシステムはいらない」という意見も

続いて事業者の立場からみたバスロケというテーマで2者が発表しました。神戸市役所からは、神戸市で行われている「Urban Innovation KOBE」のプロジェクト「地域統合バスロケの整備実証実験」について、その背景となる市内を走るバス8事業者におけるバラバラな見た目のバスロケが乱立していることや「Urban Innovation KOBE」についての説明がありました。

この実証実験にはトラフィックブレインと東京大学の伊藤助教(当時)らが関わり、GTFS形式に準拠した「標準的なバス情報フォーマット」によりバス情報を整備する計画となっております。そのために現在は合意形成にむけて調整している段階であることが発表されました。

群馬県永井運輸からは、バスロケーションシステムについての自社からの考えが発表され、GTFS形式のバス情報を整備し、5月4日からgoogle経路検索を利用できるようになったことでバスロケの準備ができたことが報告されました。

永井運輸の担当者はバス情報の中身が「見える」ようになったため、バスロケ会社の「営業」活動に対して、「せめて技術のことを説明できるようになってほしい」という見解を述べました。また、バスロケの機能を見つつ、事業者として求めるものを考えた結果、いまのところバスロケはいらないという結論も同時に示されました。

バスロケーションシステムを整備する会社からはデータ整備の苦労や世直し隊への同調についての話が出る

バスロケに関わる企業からはGTFS形式での情報整備対応についての話題が提供されました。まず両備グループのリオスからは同じ岡山で営業する宇野バスのバスロケ「バスまだ?」と切磋琢磨することで商用バスロケで初めてリアルタイム情報を提供するようになったことや、GTFS形式のデータ作りにあたって、「運賃」の情報が壁となったという苦労についての話がされました。

全国30社以上にバスロケを提供する国際興業商事部からは、この度ジョルダンと共同で、バスロケーションシステムのためのデータ整備を行うことが発表されました。大手事業者がデータを整備するにはシステムが煩雑であり、それを変えるのは難しいと前置きした上で、国際興業商事部やジョルダンといった会社が情報を整備することでバス事業者に貢献することが可能であるという見解が示されました。その上で、神戸市内を走るとある民間バスでは国際興業商事部が提供するバスロケが稼働していることもあり、今回の神戸市のバスロケ改善プロジェクトをバックアップしていきたいという見解も同時に語られました。

また「駅すぱあと」で知られるヴァル研究所は、GTFS形式のデータはグーグルマップに載せるのがゴールではないとし、将来的には到着予測を出せるようにした上でGoogleだけではなくYahoo!も巻き込んでいきたいと意欲を示しました。そして中津川市で行われたバスロケーションシステム整備とサイネージ設置の取り組みを引き合いに、GTFS形式でバスロケーションシステムに必要なデータを整備することは難しくないこと、また、グループでバスロケを開発するVISHとの連携でGTFS形式にリアルタイム機能(遅れや現在のバス位置を表示する機能)をシステムの標準機能でできるようにしつつあると説明し、現在GTFS形式のバス情報データ整備が進む富山から「バスロケ世直し隊」と協調しながらやっていきたいと語りました。

画像3

中津川市で行われているGTFS形式のバス情報を活用したサイネージのデモ画面


学識経験者からはデータの活用やデータの本質に関して鋭い指摘

学識経験者からはまず東京大学の伊藤助教(当時)から話があり、「現状の”バス情報”という言葉すらない世界をなんとかしたい」という言葉から、標準フォーマットによるコミュニティ形成や新規プレイヤーの登場の重要性について語りました。

また、オープンデータの本質として、持っているデータの価値をバス会社が見直すきっかけとなることやITシステムの刷新によって運営が効率化される可能性を挙げ、次は運輸局の届け出をデジタル化することに取り組みたいと語りました。その上で、バスロケも国土交通省で標準化するために、情報交換や提言をしたことを発表、その際国交省から前向きな返事があったことから今後への期待感をにじませました。

今後、GTFS形式でのバス情報整備は加速度的に進むか

GTFS形式でバス情報を整備した事業者や地域は2018年7月現在、25以上あります。特にGTFS形式に準拠した「標準的なバス情報フォーマット」が発表された2017年3月以降、事実上「国からのお墨付き」を得たことから最近一気に拡大しつつあります。今後はGTFS形式でのバス情報整備に加え、同形式でのリアルタイム情報の提供についても一気に拡大していくことが想定され、整備効果やデータ活用についての知見の発表や蓄積が待たれることとなりそうです。

関連資料

バスロケ世直し隊 決起集会 開催レポート | Traffic Brain http://t-brain.jp/news/kick_off_report/