ニシンや石炭の交易で栄えた港湾都市「留萌」市街地をめぐる

北海道の北西部に位置する留萌市は、留萌振興局の中心都市であるにもかかわらず、人口は2万人弱と少ない。アクセス面では、高規格幹線道路「深川・留萌自動車道」が整備され、旭川市からは1時間強、深川市からは1時間もかからずに到着できる。一方、鉄道は2023年に留萌本線の石狩沼田~留萌駅間が廃止されたことにより、現在は通らなくなっている。

深川留萌道を走ると、石狩沼田のまちを右に見ながら標高を上げ、美葉牛峠を越えていく。峠の標高はそれほど高くないため、連続するカーブなどはない。むしろ、留萌側は谷間を走るため、トンネルが多いのが特徴だ。突然谷筋から開けた景色が広がると思ったら、いつの間にかまちなかに出ているという印象を受ける。

市街地は留萌川の左岸に開けている。留萌川は、まちの由来である「ルルモッペ」(汐が奥深く入る川)に由来しており、市街地では大きく蛇行して流れていた。大正時代に現在の水路となり、同時期に留萌港の築港工事も行われた。港の建設には20年もの歳月を要し、築港後は石炭の輸出港として栄えた。

 

黄金岬に続く高台にある大町地区の様子

 

明治時代の留萌は、現在の港の位置や大町・港町・本町が栄えていたようだ。本町から黄金岬方面に向かうと、道が上り坂になり、標高20m弱まで上がる。大町あたりは、港を見下ろす高台に位置しているため、ここが古くから栄えた場所であることは非常に納得がいく。古い市街地ゆえか、駅周辺よりも住宅などの密度が高い印象を受けた。黄金岬から眺める留萌の風景は、北海道らしい雄大な地形が広がり、非常に美しい。

 

黄金岬から留萌市役所、沖見・見晴町方面を望む

 

現在、施設や商店が建ち並ぶのは本町、錦町、開運町で、錦町3丁目と4丁目の境にあるセイコーマートのある交差点でL字型に折れ曲がっている。人通りが皆無とは言えないが、まばらで、開いている商店も活気に欠ける。どちらかというと、業務地区という印象が強い。

 

国道231号を西側から

開運町の通りを北方向に見る

 

一方で、市街地を走るバスは本数が少ないにもかかわらず、10人ほどが乗車していた。これは、北海道各地でもよく見られる光景だ。スーパーや病院へのアクセスが確保されているからだろうか。

開運町を貫く道の先には栄町があり、以前は留萌本線留萌駅が置かれていた。旧留萌駅は、廃線から半年以上が経過しているとはいえ、かなり寂れた雰囲気を漂わせている。もともと利用者が少なかったことも影響しているのだろう。駅前にも、かつての商業地区の面影が残っている。

 

留萌駅前の通り

 

現在、商業地区としての集積が見られるのは、国道231号線沿いに立ち並ぶロードサイド店舗だ。特に、コープさっぽろが立地する留萌振興局周辺と、市街地から陸上自衛隊留萌駐屯地を挟んで東側の南町周辺に、店舗の集積が見られる。

 

南町の商業集積

 

歓楽街は、先に紹介したL字型の商業エリアの裏側、主に開運町や錦町に位置するが、衰退の様子が見て取れる。かつては「有楽トンネル」というアーケードがマニアの間では知られていたが、現在はほとんどがアーケード部分ではなくなっており、裏側は完全に取り壊されてホテルの駐車場になっていた。留萌市街地全体を見渡しても、L字の通り以外は全体的に店舗が低密度な印象を受けた。

 

アーケードの「有楽トンネル」。1959年に個人が建設したようだ。
2023年現在、中にはスナックの店舗が1軒あるのみ。旧アーケード部は駐車場になっていた

歓楽街の相対的に店舗密度が高い通りでも、絶対的な店舗の密度は低めに感じる

 

こうして留萌市街を見ていくと、良港を持ち、そこから港湾都市として発展してきた歴史が見えてきた。また、市街地の位置も築港以降は大きく動いておらず、目抜き通りのラインもはっきりしている。一方で、目抜き通りに留萌地域で4店舗を営む「中央スーパー」を除けば、目立った商業施設が少ないことが気がかりだ。

中心市街の居住人口を増やすことで、この課題は少し解決する可能性はある。しかし、そもそも人口減少下の状況で、新規に市街地に集合住宅を建設しても、需要があるかは不明瞭だ。それよりも、大きいチェーンストアの営業を維持し、乗合交通でのアクセスを確保する方が住民満足度としては高いのかもしれない。

 

錦町から開運町への通りに立つ「中央スーパー」

 

厳しい見立てもしてきたが、周辺の自治体と比較すれば、留萌市は圧倒的に「町場」としての要素を備えている。そこに大きな港湾を中心とし、留萌地域の中心都市として「外」との玄関口であることを感じたのだった。

 

 

追記:留萌と言えば、大手書店の「三省堂書店」が出店している。出店エピソードがかなり面白いので、ぜひ以下の記事も読んでみてほしい。

 

www.nippon.com

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